AI時代に合わせた著作権法の改定-草案
第30条の4(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)の改正
著作権法の改正案を具体的に提示するのは複雑な作業ですが、AI時代に対応するための主要な改正ポイントを以下に示します。これらは、日本新聞協会の意見書や現行の著作権法を踏まえた提案です。
- 現行の条文に以下の項を追加:
2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一 著作権者が明示的に利用を拒否している場合
二 人工知能による学習を目的とする場合であって、著作権者の許諾を得ていないとき
3 前項第二号の規定にかかわらず、著作権者の利益を不当に害しない場合として政令で定める場合は、第一項の規定を適用する。
- 「非享受目的」の定義を明確化する条項を追加:
4 第一項に規定する「享受を目的としない」とは、著作物の表現そのものを鑑賞し、又は視聴することを目的としない場合をいい、人工知能による学習過程において著作物の特徴を抽出し、これを利用することは含まないものとする。
第47条の5(電子計算機による情報処理及びその結果の提供に付随する軽微利用等)の改正
- 軽微利用の定義を厳格化する項を追加:
2 前項に規定する軽微な利用は、著作物の一部分を短い文章で引用する程度にとどめるものとし、著作物の本質的な部分を再現するものであってはならない。
新設条項: 人工知能による著作物の利用
第○○条 人工知能システムが著作物を利用して学習を行う場合には、著作権者の許諾を得なければならない。ただし、次に掲げる場合はこの限りでない。
一 学術研究目的で、かつ営利を目的としない場合
二 著作権者の利益を不当に害しないと認められる場合として政令で定める場合
2 前項の規定により人工知能システムが著作物を利用する場合、利用者は著作権者に対し、相当な額の補償金を支払わなければならない。
附則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して1年を経過した日から施行する。
(経過措置)
2 この法律の施行前に開始された人工知能システムによる著作物の利用については、改正後の規定にかかわらず、なお従前の例による。ただし、この法律の施行後6か月以内に著作権者の許諾を得るよう努めなければならない。
これらの改正案は、AI開発者と著作権者の利益のバランスを取りつつ、著作権者の権利をより強く保護することを目指しています。特に、AIによる学習目的の利用に関して著作権者の許諾を必要とし、また「非享受目的」の解釈を明確にすることで、現行法の曖昧さを解消しようとしています。
さらに、軽微利用の定義を厳格化し、AIによる著作物の過度な利用を制限しています。新設条項では、AI学習のための著作物利用に関する基本的なルールを設定し、一定の条件下で補償金制度を導入しています。
この改正案は、日本新聞協会が指摘している問題点に対応しつつ、AI技術の発展と著作権保護のバランスを取ろうとするものです。ただし、実際の法改正にあたっては、さらに詳細な検討と関係者間の議論が必要となるでしょう。